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殿町マンション問題
市長談話の矛盾点

市長談話の矛盾点
8月23日山陰中央新報掲載上定昭仁松江市長のマンション問題に関する談話は、
「松江らしい景観を保全する観点から望ましくないものととらえている」との公式見解(3月14日文書)と大きく矛盾しているので、4点に分け反論します。
①「地元の行政が異を唱える建築を強引に進めることは企業側の社会的責任として困難だろう」について
〇「企業の社会的責任」を言う前に、「市長の社会的責任」こそが果たされるべきであろう。昨年10月の景観審議会以降、市長として「あの建築は好ましくない」と表明して欲しいと何度も要請してきたが無頓着だった。今頃何を評論家のようなことを言っているのか。
〇松江市は景観計画を狭く解釈し「天守からの眺望が稜線を妨げなければいい」とした。その結果、事業者協議をするたびに15階(44m)から17階(53m)、そして天守と同じ高さの19階(58m)までに高くなった。
〇景観審議会では平地からの眺望は検討せず、「適法に計画されているのでやむを得ない」とさしたる議論もないまま計画を承認した。
〇景観審議会委員の「再度審議すべし」との申し入れを頑なに拒否し、「あの建物は好ましくない」と表明する機会を失ってしまったではないか。
〇あれ1棟くらいでは松江の景観はびくともしないとか、世界遺産登録の妨げにはならないとか…なんの根拠もない発言を繰り返した。
〇大橋川マンションに対し「隣接建物に高さを揃えて欲しい」という景観審議会答申を、事業者に1回だけ要請し諦めてしまった。なぜ2度3度要請しなかったのか。
②「利用計画のない土地を買い取るわけにはいかない」について
〇具体的用途云々の前に、「松江城周辺の景観を保全する」という大きな目的が意識から欠落しているからこんな発言になる。
〇マンション用地は、大手前からカラコロ広場への動線に位置しており、利用価値は極めて高い。観光客のランチ等飲食店不足、駐車場不足は顕著。
〇旧日銀松江支店や旧日本勧業銀行松江支店など多くの金融機関が立地し、「洋館のまち」という歴史性を踏まえた整備もぜひ検討して欲しい。
③「市から買い取りを持ち掛けたことはなく、今後も持ち掛けない」について
〇市長も事務当局も、あたかも「買い取り交渉をしたが価格が折り合わなかったので断られた」と受けとめられる発言を繰り返した経緯がある。
〇「市から買い取りを持ち掛けたことはなく、今後も持ち掛けない」との居直り発言は、風景会議のみならず、マンション問題に懸念を抱いている多くの市民や市議会の神経を逆撫でし、愚弄するもの。
〇風景会議要請文に直接回答書を手交する席(3月14日)で、市長は「皆さんと思いと認識は同じだ」と3回繰り返した。
この発言は、風景会議が階層の引き下げ、または用地の買い取りを要請してきたことに対する回答の中での発言。
〇その発言に基づいた行動がなされることを期待したが、「まったく何もしていないこと」が後日明らかになった。
〇為政者の嘘はたとえ小さな嘘でも厳しく追及される。なぜならば、すべての言動に対する信頼性を疑わせる要因となるからだ。
④「事業者から聞いた金額も市の想定と掛け離れている」について
〇5月初旬、風景会議のメンバーが大阪の事業者と面談し「市から申し出があれば価格提示する」との発言があったことを市当局に報告した。
「買い取りの意志を表明し、オープンな価格交渉をして欲しい」という要請ををしたが、市長は応じなかった。
〇用地交渉は一度や二度の折衝で妥結する性質のものではない。それを当初の段階の下交渉だけで「かけ離れている」と判断したのは、買う気がないからにほかならない。
〇事業者が示したという価格積算(土地取得、建物撤去、造成、設計費、収益)は交渉の余地が十分にある。
(特に収益は、国立市の富士見通りの新築マンション撤去の例にみられる通り、企業イメージとの比較など事業者が総合的に判断する要素)
〇利用計画のたっていない「ホテル宍道湖跡地」の応分の面積との交換も選択肢として提案してきたが拒否された。
⑤「購入の意志を示すと前例ができ、買取検討をし続けることになりかねない」について
〇そんな事態を回避するために景観条例を見直すことにしたはずだ。これは子供だましの「買わないことの屁理屈」を述べるだけ。
〇新基準までのタイムラグの間に高層マンションが幾棟も計画されることは考えられない。今回のマンションについて緊急避難的に取得をすべしと提案している。
〇確かに、新基準の高さ制限には法的拘束力はない。だからこそ①の効果が出るように、景観条例による規制と行政の決意と、それをバックアップする市民の強固な意志が必要なのだ。
○世界遺産の精神がまさしく「行政の決意と、それをバックアップする市民の強固な意志」を必要とする。それを放棄するこの発言は、共同して世界遺産登録を目指している松本市や犬山市などに対し、申し訳ないと思わないのだろうか。
結論として、
市長及び担当部局の「松江の歴史と地理に対する無理解と感受性の脆弱さ」が景観行政判断の遅れと不作為を招いた
というのが実態であり、今からでも改めることを強く要請します。
